国の支援制度を活用しようとすると、よく登場する 3 つの言葉があります。
「補助金(ほじょきん)」「助成金(じょせいきん)」「給付金(きゅうふきん)」
どれも国や自治体からお金が出る制度ですが、監督官庁・採択方式・対象・必要な専門家がすべて違います。違いを理解しないまま申請すると、間違った専門家に依頼して時間を浪費したり、本来活用できた制度を見落としたりします。
この記事では、私が厚生労働省で助成金審査官として制度運用に携わってきた経験から、補助金・助成金・給付金の 3 軸比較表と、それぞれの典型制度・組み合わせ戦略を整理します。詳細な専門家選びや申請テクニックは、関連記事へのリンクから深掘りしてください。
この記事で分かること
- 補助金・助成金・給付金、3 つの根本的な違い
- 監督官庁・採択方式・対象・金額・必要な専門家の 3 軸比較表
- 3 つの典型制度(ものづくり補助金・人材開発支援助成金・事業復活支援金)
- どれを使うべきかの判断フロー
- 補助金 + 助成金を組み合わせる戦略パターン
補助金・助成金・給付金の 3 軸比較表
まず結論を 1 枚の比較表で示します。各項目は後の章で順番に詳しく解説していきます。
| 観点 | 補助金 | 助成金 | 給付金 |
|---|---|---|---|
| 監督官庁 | 経産省・中小企業庁・自治体 | 厚生労働省 | 内閣府・中小企業庁・各省横断 |
| 対象 | 設備投資・DX・新事業 | 雇用・人材育成・働き方改革 | 緊急時の事業継続・売上減対応 |
| 採択方式 | 公募審査制(年3-4回) | 通年・要件充足型 | 不定期・要件充足で一律給付 |
| 採択率 | 30〜60%(事業計画の質で差) | 要件を満たせばほぼ確実 | 要件を満たせば一律支給 |
| 金額規模 | 数十万〜数千万円 | 数十万〜数百万円 | 数万〜数百万円(一律) |
| 使途 | 申請計画に拘束 | 対象活動に拘束 | 比較的自由(運転資金可) |
| 必要な専門家 | 行政書士・経営コンサル | 社会保険労務士(独占業務) | 原則自社申請可能 |
| 典型制度 | ものづくり補助金 省力化投資補助金 IT導入補助金 | 人材開発支援助成金 キャリアアップ助成金 雇用調整助成金 | 事業復活支援金 持続化給付金 家賃支援給付金 |
違い 1: 監督官庁 — どの省庁が管轄しているか
最大の違いは「どの省庁が管轄しているか」です。この違いが、後述する採択方式・対象・必要な専門家のすべての違いの源泉になっています。
- 補助金: 経済産業省・中小企業庁・各自治体。経済政策・産業政策の一環として、設備投資や新事業立ち上げを後押しする目的で設計されています
- 助成金: 厚生労働省。雇用安定・人材育成・働き方改革といった、労働政策の一環として設計されています
- 給付金: 内閣府・中小企業庁・各省横断。災害・パンデミックなどの緊急事態に応じて時限的に創設される、緊急対応・生存支援の制度です
違い 2: 対象 — 何のためのお金か
管轄省庁が違うため、お金の使い道として想定されている対象も明確に分かれます。
補助金: 「モノ・事業への投資」
補助金は設備投資・DX投資・新事業立ち上げが主な対象です。代表的な補助金は以下です。
- ものづくり補助金: 革新的な製品・サービス開発、生産プロセス改善
- 省力化投資補助金: 人手不足解消のための省人化・自動化投資
- IT 導入補助金: 業務効率化のための IT ツール導入
- 事業再構築補助金: 思い切った事業転換・新分野展開
- 各自治体の補助金: 江東区 HP 補助金、東京都の各種補助金など
助成金: 「ヒト・働き方への投資」
助成金は雇用・人材育成・働き方改革が主な対象です。代表的な助成金は以下です。
- 人材開発支援助成金: 従業員向けの研修・教育訓練の費用補助
- キャリアアップ助成金: 非正規雇用から正規雇用への転換、待遇改善
- 雇用調整助成金: 経済上の理由で従業員の雇用維持に努める事業主への補助
- 働き方改革推進支援助成金: 労働時間短縮・年休取得促進などの取組への補助
- 両立支援等助成金: 育休・介護休業の取得支援
給付金: 「緊急時の事業継続・生活支援」
給付金は災害・パンデミック・経済危機などの緊急時に時限的に創設される制度です。事業の成長や投資を支援するというより、「平時の事業を維持するための生存支援」の性格が強いのが特徴です。
- 事業復活支援金 (2022 年): コロナ禍で売上が減少した事業者への支援
- 持続化給付金 (2020 年): コロナ禍初期の事業継続支援
- 家賃支援給付金 (2020 年): コロナ禍の家賃負担軽減
- 各自治体の応援金・支援金: 災害・地域特有の緊急時に随時創設
要するに、補助金は「モノ・事業」、助成金は「ヒト・働き方」、給付金は「緊急時の事業継続」と覚えるのが分かりやすいです。
違い 3: 採択方式 — いつ、どう審査されるか
ここが実務上、最も大きな違いです。
補助金: 公募審査制
補助金は「公募審査制」です。年に 3〜4 回(補助金種別による)の決まった公募期間があり、その期間内に申請を完了し、事業計画の質を審査される必要があります。公募期間外には申請できません。
例えば、ものづくり補助金は通常年 3-4 回の公募があり、各回の公募期間は 1-2 ヶ月。次の公募まで数ヶ月待つ必要があります。採択率は補助金種別・公募回によって 30〜60% 程度です。事業計画の質・政策目的との合致度が問われるため、申請内容によって明確に差がつきます。
不採択になる典型理由は 補助金が不採択になる理由 TOP 5 で詳しく解説しています。
助成金: 通年・要件充足型
助成金は「通年制」かつ「要件充足型」です。要件を満たせば、いつでも申請でき、採択者を選ぶのではなく制度の対象になるかを判定する性格のため、形式要件を満たせばほぼ確実に支給されます。「次の公募まで待つ」という制約がないため、計画的に活用しやすいのが特徴です。
例えば、人材開発支援助成金は、研修開始の 1 ヶ月前までに訓練計画届を提出すれば、いつでも活用できます。ただし、書類不備や要件未達があれば不支給になります。「ほぼ確実」とは、書類が完璧に整っていることが前提です。
給付金: 不定期・要件充足で一律支給
給付金は不定期で創設されます。緊急時に時限的に立ち上がり、要件を満たせば事業規模に応じて一律金額が支給される設計です(持続化給付金は中小企業上限 200 万円・個人事業主上限 100 万円など)。
審査は形式要件中心で、事業計画の質を問うものではありません。一方、申請期間が短いことが多く、見落とすと活用機会を失います。中小企業庁・各省庁の公式情報や、商工会議所・商工会の情報配信を継続的にチェックする必要があります。
違い 4: 必要な専門家 — 誰に頼むべきか
補助金・助成金・給付金は、必要な専門家が異なります。これは法律で明確に区別されています。
補助金の専門家: 行政書士 + 経営コンサル
補助金は「行政書士・経営コンサル・中小企業診断士」の領域です。申請書類の最終作成・提出代行は行政書士の独占業務(行政書士法 第 1 条の 2・第 19 条)、事業計画の戦略設計・申請ストーリー構築は経営コンサル・中小企業診断士の領域です。
詳しい選び方は 補助金は行政書士?コンサル?選び方ガイド、コンサルの違法/合法判定は 補助金コンサルは違法?必要な資格と合法な依頼先の見分け方 を参照してください。
助成金の専門家: 社会保険労務士
助成金は「社会保険労務士(社労士)」の独占業務です。社会保険労務士法 第 27 条で、労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成・提出代行は社労士の独占業務と定められています。
助成金の申請を、社労士でない者が報酬を得て業として行うと、社労士法違反になるリスクがあります。助成金は必ず社労士に依頼するのが安全です。
給付金の専門家: 原則自社申請可能
給付金は形式要件中心の審査で、申請書類も比較的シンプル(売上証明書・申告書・本人確認書類など)なため、原則として自社で申請可能です。複雑な事業計画書は不要なケースが多く、税理士に売上証明等の確認を依頼すれば十分なことが大半です。
判断フロー: どれを使うべきか
補助金・助成金・給付金、どれを優先すべきかは、自社の課題と目的次第です。
目的別の判断フロー
- 設備投資・新事業立ち上げ・DX投資・新サービス開発 → 補助金(数百万〜数千万円規模)
- 従業員研修・正規化・働き方改革 → 助成金(要件満たせば確実)
- 災害・パンデミック等の緊急時の事業継続資金 → 給付金(不定期創設・期間内のみ)
- 一つの会社で複数の課題がある → 補助金+助成金を組み合わせ運用(次章で解説)
補助金 + 助成金を組み合わせる戦略
実は、補助金と助成金は両方使えることが多いです。組み合わせると効果が最大化します。給付金は不定期創設のため、組み合わせ前提では設計せず「タイミングが合えば追加で活用」のスタンスが現実的です。
パターン 1: 設備投資 + 研修
ものづくり補助金で新しい設備を導入し、その設備を使いこなすための従業員研修を人材開発支援助成金で実施する。設備(補助金)と人材(助成金)をセットで強化する組み合わせです。
パターン 2: 業務改革 + 働き方改革
IT 導入補助金で業務システムを導入し、それによる業務時間削減を働き方改革推進支援助成金で経営改善する。システム(補助金)と労働環境(助成金)をセットで改革する組み合わせです。
パターン 3: 新事業立ち上げ + 雇用
事業再構築補助金で新事業を立ち上げ、その事業のための新規雇用にトライアル雇用助成金やキャリアアップ助成金を活用する。事業(補助金)と雇用(助成金)をセットで成長する組み合わせです。
注意: 同じ経費は併給できない
補助金と助成金は基本的に併給可能ですが、同じ目的・同じ経費に対しては併給できないのが原則です。例えば、ものづくり補助金で購入した設備を使った研修費用を、人材開発支援助成金でも申請する場合、研修費用部分が二重計上にならないよう経費の切り分けが必要です。
各制度の併給制限は公募要領に明記されているので、事前確認が必須です。専門家に相談する場合、補助金は経営コンサル・行政書士、助成金は社労士、と分けて相談するのが現実的です。1 つの会社で「業として」両方を扱うのは法律上難しいことが多いためです。
参考: Techt の補助金活用支援と料金
Techt は主に補助金活用支援を提供しています。助成金は提携する社労士、給付金は不定期創設のため都度ご相談ベースで対応しています。
- 着手金: 100,000円(税別)— 事業計画ヒアリング・申請ストーリー設計・数値根拠作成・ドラフト作成まで
- 成功報酬: 採択金額の10%(上限200万円・税別)— 不採択時は発生しません
- 組み合わせ戦略: 「補助金+助成金」のセット運用を標準でアドバイス(社労士紹介込み)
元厚労省 助成金審査官として制度運用に携わってきた経験を活かし、補助金・助成金両方の制度趣旨を踏まえた組み合わせ設計をお手伝いします。詳しくは 補助金活用支援サービスのご案内 をご覧ください。
よくある質問
補助金・助成金・給付金は何が違うのですか?
監督官庁・採択方式・対象が違います。補助金は経産省・自治体系で「モノ・事業への投資」を公募審査制で支援(採択率30-60%)。助成金は厚労省系で「ヒト・働き方への投資」を要件充足型で支援(要件を満たせばほぼ確実)。給付金は内閣府・各省横断で「特定状況下の事業継続・生活支援」を一律給付(事業復活支援金・持続化給付金など)するもので、平時の事業成長施策というより緊急時の生存支援の性格が強いのが特徴です。
給付金は補助金・助成金と何が違うのですか?
主な違いは①審査の有無、②使途の自由度、③タイミングです。給付金は要件を満たせば原則一律支給で個別審査がなく、使途も比較的自由(運転資金など)。一方、補助金は事業計画の審査が必要で使途は申請内容に拘束されます。助成金は要件審査はあるが計画書ベースの定性審査ではありません。給付金は不定期で創設される(コロナ禍の持続化給付金・事業復活支援金など)緊急対応型の制度が多く、平時には選択肢が限定的です。
どれを優先して使うべきですか?
目的別に使い分けます。設備投資・新事業立ち上げ・DX投資なら補助金(数百万〜数千万円規模)。従業員研修・正規化・働き方改革なら助成金(要件満たせば確実)。災害・パンデミック等の緊急時の事業継続資金なら給付金(不定期創設・公募期間内のみ)。一つの会社で「補助金で設備、助成金で人材育成」のように組み合わせるのが王道で、給付金は緊急時に追加で活用するイメージです。
補助金と助成金は併用できますか?
基本的に併給可能ですが、「同じ目的・同じ経費」に対しては併給できないのが原則です。例えば、ものづくり補助金で導入した設備に関する研修費を、人材開発支援助成金でも申請する場合、研修費部分が二重計上にならないよう経費を切り分ける必要があります。具体的な併給制限は各制度の公募要領に明記されているので、申請前に必ず確認してください。専門家を相談する際は、補助金は経営コンサル/行政書士、助成金は社労士、と分けて相談するのが現実的です。
補助金と助成金で必要な専門家は違うのですか?
違います。補助金(経産省・自治体系)の申請書類作成・提出代行は行政書士の独占業務(行政書士法 第1条の2・第19条)。助成金(厚労省系)の申請代行は社会保険労務士の独占業務(社会保険労務士法 第27条)。事業計画の戦略設計や数値根拠の作成は経営コンサルの領域で資格不要です。詳しくは関連記事「補助金は行政書士?コンサル?選び方ガイド」「補助金コンサルは違法?必要な資格と合法な依頼先の見分け方」をご覧ください。
Techtでは補助金・助成金・給付金のどれを扱っていますか?
主に補助金活用支援を提供しています。着手金10万円+成功報酬10%(上限200万円)で、事業計画ヒアリングから申請ストーリー設計、ドラフト作成までを担当します。最終的な書類確認・提出は事業主または提携行政書士が行う体制です。助成金(人材開発支援助成金など)は提携社労士をご紹介、給付金は不定期創設のため都度ご相談ベースで対応します。「補助金 + 助成金」の組み合わせ戦略のアドバイスも標準で含めます。
まとめ: 「モノは補助金・ヒトは助成金・緊急時は給付金」
補助金・助成金・給付金の違いを整理すると、以下のようになります。
- 補助金: 経産省系、設備・事業への投資、公募審査制、採択率 30-60%、専門家は行政書士・コンサル
- 助成金: 厚労省系、雇用・人材への投資、通年制、要件を満たせばほぼ確実、専門家は社労士
- 給付金: 各省横断、緊急時の事業継続、不定期創設、要件充足で一律支給、原則自社申請可
- 組み合わせ: 補助金+助成金の「モノ + ヒト」セット運用で効果最大化。給付金はタイミングが合えば追加
各専門家の選び方は 補助金は行政書士?コンサル?選び方ガイド、コンサルの違法/合法判定は 補助金コンサルは違法?必要な資格と合法な依頼先の見分け方、補助金の全体フローは 補助金 採択とは?採択前後の全体像、不採択回避は 補助金が不採択になる理由 TOP 5 も合わせてどうぞ。
※本記事は 2026 年 5 月時点の制度・実務に基づく一般的な解説です。各補助金・助成金・給付金の詳細要件・併給制限・最新の公募状況は、各制度の所管官庁の公式情報をご確認ください。給付金は社会情勢に応じて随時新規創設・終了されます。
