中小企業の経営者から、こんな相談をよく受けます。

「ものづくり補助金を申請したいんだけど、行政書士に頼むべき?それとも経営コンサル?知り合いの中小企業診断士に頼んでもいい?社労士は別の人がいるけど、その人でいいの?」

結論を先に言うと、専門家の使い分けは「申請書類の代行」と「事業計画の設計」で分けて考えるのが正解です。そして補助金の場合、これらは別々の専門家に依頼してもよいですし、独占業務の関係で「同じ人がすべてやる」のが必ずしもベストとは限りません。

この記事では、私自身が厚生労働省で助成金審査官として「審査する側」にいた経験と、その後アクセンチュアでコンサルタントとして「申請する側」を支援してきた経験の両方から、専門家の選び方を整理します。

この記事で分かること

  • 補助金申請を頼める 4 タイプの専門家とそれぞれの違い
  • 行政書士の独占業務とは(行政書士法 第 1 条の 2・第 19 条)
  • 「補助金コンサルは違法?」の本当の境界線
  • あなたの状況別、どの専門家を選ぶべきかの判断基準
  • 依頼先を選ぶときのチェックリスト

補助金申請を頼める 4 タイプの専門家

まず、補助金申請でよく登場する専門家は以下の 4 タイプです。それぞれ法律で定められた独占業務が異なり、得意領域も違います。

専門家独占業務補助金申請での得意領域
行政書士官公署に提出する書類の作成・提出代行(行政書士法 第 1 条の 2)申請書類の作成・形式チェック・提出代行
社会保険労務士(社労士)労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成・提出代行(社労士法 第 2 条)厚労省系の助成金(人材開発支援助成金・キャリアアップ助成金など)の申請
中小企業診断士独占業務なし(名称独占資格)経営診断・事業計画策定・補助金申請のアドバイス
経営コンサルタント独占業務なし(無資格でも可)事業戦略・申請ストーリー設計・数値根拠の作成支援

ここで重要なのは、「補助金」と「助成金」で頼むべき専門家が違うという点です。

補助金(経済産業省・自治体系)と助成金(厚生労働省系)の違い

補助金(ものづくり補助金、省力化投資補助金、IT 導入補助金など)

主に経済産業省・中小企業庁・自治体が公募する制度です。設備投資・DX 投資が対象で、申請支援は行政書士・経営コンサル・中小企業診断士の領域になります。

助成金(人材開発支援助成金、雇用調整助成金、キャリアアップ助成金など)

厚生労働省系の制度で、雇用・人材育成が対象です。申請支援は社労士の独占業務と法律で定められています。

助成金については「社労士の独占業務」と明確に決まっているので、社労士に頼むのが安全です。一方、補助金については独占業務の範囲が状況によって変わるので、もう少し詳しく見ていきます。

行政書士の独占業務とは(補助金は該当する?)

行政書士法 第 1 条の 2 では、行政書士の業務を次のように定めています。

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含む)その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。― 行政書士法 第 1 条の 2 第 1 項

そして第 19 条で、これを「他の資格者を除き、行政書士でない者が業として行うことを禁止」しています。

補助金申請書類は「官公署に提出する書類」

ものづくり補助金・省力化投資補助金・IT 導入補助金などの申請書類は、「官公署に提出する書類」に該当します。つまり「業として(報酬を得て反復継続的に)」これらの書類を作成・提出代行できるのは、原則として行政書士のみです。

では「補助金コンサル」は違法なのか?

ここがよく誤解されるポイントです。「補助金コンサル=違法」というわけではありません。境界はもっと細かいです。

違法になるのは、「行政書士でない者が、業として、報酬を得て、官公署提出書類を作成・提出代行する」場合です。逆に言えば:

  • 事業計画書のドラフト作成・添削(経営コンサル業務として)
  • 申請ストーリー・数値根拠の設計(戦略設計として)
  • 過去の採択事例を踏まえたアドバイス(コンサルティングとして)
  • 提出書類の最終確認は事業主自身が行う(事業主の意思に基づく作業)

これらは行政書士法の独占業務にはあたりません。経営コンサル・中小企業診断士が「事業計画の中身を一緒に作り込む」のはむしろ専門領域です。

境界線のまとめ

戦略設計・事業計画ドラフト・アドバイスはコンサルの領域。
申請書類の最終作成・提出代行は行政書士の領域。
この線を踏み越えなければ、コンサルが補助金支援をすることは合法です。

したがって、補助金支援を依頼するときに重要なのは「どこまで頼むか」を明確にすること。戦略設計・計画書ドラフトはコンサル、最終整理・提出は事業主または行政書士、という分担にすれば、誰に頼んでも適法に進められます。

状況別: あなたはどの専門家を選ぶべきか

ここからは、よくあるパターンごとに「どの専門家に頼むのがベストか」を整理します。

パターン 1: 申請書類の作成・提出を全部任せたい

→ 行政書士に依頼

既に事業計画が固まっていて、あとは書類を整えて提出するだけ、というケースです。書類作成の経験豊富な行政書士に頼むのが効率的です。料金は申請代行料として 10〜30 万円程度が一般的です。

ただし、行政書士の中にも「補助金専門」「許認可専門」「相続専門」などの専門領域があります。補助金申請の経験豊富な行政書士を選ぶことが重要です。

パターン 2: 事業計画から一緒に作りたい・採択確度を上げたい

→ 経営コンサル・中小企業診断士に依頼

「補助金で何を買うか・どう成長戦略を描くか」から相談したい場合は、経営コンサルや中小企業診断士の領域です。事業計画の中身を一緒に作り込むのは、行政書士の独占業務ではない経営支援の領域です。

料金は着手金 10〜50 万円 + 成功報酬 10〜15% が業界平均。中小企業診断士は名称独占資格なので、診断士の中にも「補助金専門」「経営戦略専門」「事業承継専門」などの専門があります。

パターン 3: 補助金 + 助成金もまとめて活用したい

→ 補助金はコンサル、助成金は社労士に分けて依頼

補助金(経産省系)と助成金(厚労省系)は別の専門家領域です。1 つの会社で両方を「業として」担当することは法律上難しいので、補助金は経営コンサル・中小企業診断士、助成金は社労士、と分けて依頼するのが安全かつ正しいやり方です。

パターン 4: 採択後も実績報告まで含めて伴走してほしい

→ 採択後フォローを含むコンサルに依頼

補助金は採択されて終わりではなく、交付申請・実績報告・効果報告(最大 5 年)と続きます。補助金種別によって採択後の運用負荷は大きく違い、特にものづくり補助金や事業再構築補助金などは実績報告の不備で減額・取消になるケースもあります。

採択前支援だけで終わるのではなく、採択後の運用サポートまで含めて見てくれる専門家を選ぶと安心です。行政書士は基本的に書類作成までで採択後フォローは別業務ですが、コンサルなら一気通貫で対応できる場合があります。

専門家タイプ別・メリット/デメリット比較

4 タイプの専門家を「メリット」「デメリット」「向いている事業者」で整理します。自社の状況に合った専門家タイプを選ぶための判断材料として活用してください。

専門家タイプ主なメリット主なデメリット向いている事業者
行政書士書類作成・提出代行が独占業務として法的に保護
形式不備による不採択リスクを排除
料金体系が明確
事業計画の中身づくりは専門外のことが多い
過去採択事例ベースのテンプレ的アプローチになりがち
採択後フォローは別契約
事業計画は固まっており、書類整理・提出だけ任せたい事業者
中小企業診断士経営診断・事業計画策定の専門教育を受講
商工会議所・自治体の補助金窓口担当経験を持つ人が多い
名称独占資格で一定の信頼性
書類の最終作成・提出代行は不可(行政書士登録があれば可)
人によって専門領域に大きな差
料金体系のばらつきが大きい
事業計画から相談したい・公的窓口経由で進めたい事業者
経営コンサル事業戦略・申請ストーリー設計の柔軟性
業界経験・大手コンサル経験者の戦略視点
採択後フォローを一気通貫で対応可能
独占業務がないため資格の有無で品質差が大きい
書類の最終作成・提出代行は不可
成功報酬の上限・返金条件が業者により差
事業計画の戦略から作りたい・採択後の伴走も欲しい事業者
社労士厚労省系助成金が独占業務
労務管理と一体で支援可能
顧問契約による継続支援が一般的
経産省系の補助金は対応不可(行政書士登録があれば可)
事業計画策定の専門教育は受けていない
助成金専門ではない事務所もある
厚労省系の助成金(人材開発支援助成金等)を活用したい事業者

補助金コンサルが違法か合法かの判断軸は、より詳しく 補助金コンサルは違法?必要な資格と合法な依頼先の見分け方 で解説しています。

「審査側の視点」を持つコンサルの価値

ここからは、私自身の経験を踏まえた話をします。

私は厚生労働省で助成金審査官として、中小企業から提出される申請書類を「審査する側」で読んでいた経験があります。申請書類を作る側と読む側では、見ているポイントが全く違うのです。

審査側が見るのは、主に次のような点です:

  • 制度趣旨と事業内容の整合性: その補助金が想定する政策目的と、申請事業がズレていないか
  • 数値根拠の妥当性: 売上目標・投資効果の計算が「ありえる範囲」に収まっているか
  • 事業の継続可能性: 補助金を使った後、その投資を回収・継続できる体力が会社にあるか
  • 書類の形式整合性: 添付書類の不備、記載要件の漏れがないか

多くの申請書類は、形式的には整っていても、「審査側が知りたい論点」が書かれていないことが少なくありません。逆に、形式が荒くても、論点が的確に書かれていれば採択される、というケースも多々ありました。

この「審査側の視点」を持っているかどうかが、コンサルの腕の差として表れます。過去の採択事例だけを見て真似するのではなく、制度趣旨と審査論点を踏まえて事業計画を組み立てる。これができるコンサルは、率直に言って多くありません。

依頼先を選ぶときのチェックリスト

最後に、補助金支援の依頼先を選ぶときに確認すべきポイントをまとめます。

確認すべき 7 つのポイント

  • 何を担当してくれるか明確か(戦略設計・書類作成・提出代行・採択後フォロー)
  • 行政書士の独占業務に立ち入る場合は行政書士登録があるか
  • 料金体系が明確か(着手金・成功報酬・追加費用の有無)
  • 採択実績があるか(業種・規模が自社に近いものがあると尚良い)
  • 採択後の伴走範囲が明確か(実績報告・効果報告まで含むか別契約か)
  • 不採択時の対応が明示されているか(再申請支援の有無)
  • 担当者と直接コミュニケーションできるか(営業窓口だけで実務担当が別だと意思疎通に齟齬が出やすい)

参考: Techt の補助金活用支援と料金

Techt は「事業計画ドラフトと申請ストーリー設計までを担当するコンサル」のポジションで、行政書士法違反のリスクを完全に排除した体制で運営しています。

  • 着手金: 100,000円(税別)— 事業計画ヒアリング・申請ストーリー設計・数値根拠作成・ドラフト作成までを含む
  • 成功報酬: 採択金額の10%(上限200万円・税別)— 不採択時は発生しません
  • 採択後フォロー: 月額顧問契約として実績報告・効果報告まで継続支援可能(要相談)
  • 助成金併用: 厚労省系助成金は提携社労士をご紹介

元厚労省 助成金審査官として制度運用に携わってきた経験を活かし、「審査側がどこを見るか」を踏まえた申請通過率を上げるストーリー設計を提供します。詳しくは 補助金活用支援サービスのご案内 をご覧ください。

よくある質問

補助金申請は行政書士に頼むべきですか?

「申請書類の最終作成・形式チェック・提出代行」だけを頼みたい場合は、行政書士に依頼するのが最も効率的です。料金は申請代行料として10〜30万円程度が業界平均。一方、事業計画の中身を一緒に作り込む段階から相談したい場合は、経営コンサル・中小企業診断士の方が適しています。行政書士の中にも「補助金専門」「許認可専門」「相続専門」など得意領域があるので、補助金申請の実績が豊富な事務所を選ぶことが重要です。

行政書士に頼むメリットとデメリットは何ですか?

メリットは①書類作成・提出代行が独占業務として法的に保護されている、②形式不備による不採択リスクを排除できる、③料金体系が明確な事務所が多い、の3点。デメリットは①事業計画の中身(戦略・数値根拠)の作り込みは専門外のことが多い、②過去の採択事例ベースのテンプレ的アプローチになりがち、③採択後の実績報告フォローは別契約になることが多い、の3点です。事業計画から一緒に作りたい場合はコンサル併用、書類整理だけなら行政書士単独で十分です。

中小企業診断士に頼むメリットとデメリットは何ですか?

メリットは①経営診断・事業計画策定の専門教育を受けている、②商工会議所・自治体の補助金窓口で診断士が支援を担当することが多く制度趣旨に詳しい、③名称独占資格のため一定の信頼性が担保される、の3点。デメリットは①書類の最終作成・提出代行はできない(行政書士登録があれば可)、②人によって専門領域が違うため補助金専門の診断士を選ぶ必要がある、③料金体系が事務所ごとにばらつき大きい、の3点です。

補助金と助成金で頼む専門家は同じですか?

違います。補助金(経産省・自治体系)は行政書士・経営コンサル・中小企業診断士の領域、助成金(厚労省系)は社会保険労務士(社労士)の独占業務です(社労士法 第27条)。「1つの会社で両方を業として担当する」のは法律上難しいため、補助金は経営コンサル・行政書士、助成金は社労士、と分けて依頼するのが安全かつ正しいやり方です。

採択後の実績報告まで頼める専門家はどう選べばいいですか?

補助金は採択されて終わりではなく、交付申請・実績報告・効果報告(最大5年)が続きます。行政書士は基本的に書類作成までで採択後フォローは別業務扱いが一般的。中小企業診断士・経営コンサルなら一気通貫で対応できる事務所もあります。依頼前に「採択後の実績報告まで含むか別契約か」「効果報告のフォロー期間」「不採択時の再申請支援の有無」を必ず確認してください。

Techtの料金体系を教えてください

Techtの補助金活用支援は、着手金10万円(税別)+ 成功報酬10%(上限200万円・税別)。着手金には事業計画ヒアリング・申請ストーリー設計・数値根拠作成・ドラフト作成までを含みます。成功報酬は不採択時には発生しません。最終書類整理・提出は事業主または提携する行政書士が行う体制で、行政書士法違反のリスクは完全に排除しています。採択後の実績報告フォローは月額顧問契約として継続支援も可能(要相談)。元厚労省 助成金審査官の視点で「審査側がどこを見るか」を踏まえた申請をサポートします。

まとめ: 「適法な分担」と「審査側の視点」を意識する

補助金申請の専門家選びで重要なのは、独占業務を踏まえた適法な分担と、審査側の視点を持っているかの 2 点です。

  • 申請書類の最終作成・提出代行は行政書士の独占業務
  • 事業計画の戦略設計・申請ストーリーは経営コンサル・中小企業診断士の領域
  • 厚労省系の助成金は社労士の独占業務(補助金とは別領域)
  • 「補助金コンサル=違法」ではない。境界は独占業務に立ち入っているかどうか

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※本記事は 2026 年 5 月時点の法令・実務に基づく一般的な解説です。個別ケースの法的判断については、行政書士・弁護士など適切な専門家にご相談ください。