結論から言うと、業務委託契約書は「拾ったテンプレートを埋める」より、自分の仕事に合った型を一度つくって使い回すほうが、速くて事故が少ないです。私たちTechtは、お客様との契約書をClaude Code(クロードコード)で作り、電子契約(freeeサイン)で締結しています。しかも毎回ゼロから作るのではなく、自社のひな形と「ここはこう直す」というルールをClaude Codeに覚えさせておき、案件ごとの条件を渡すだけで下書きが出てくる状態にしています。
この記事は、法律やパソコンにくわしくない個人事業主・小さな会社の方に向けたものです。契約書は法的な文書なので、AIが作った下書きをそのまま使うのではなく、必ず自分で読んで内容を確かめてください。金額の大きい取引や、自社に固有の条件が絡む契約は、専門家(弁護士)の確認をおすすめします。
なぜ契約書が必要になったのか
知り合いへの発注や小さな仕事を「口約束」で済ませてきた方も多いと思いますが、2024年11月にフリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行され、状況が変わりました。従業員を雇っていない個人などに発注する側には、業務の内容・報酬額・支払期日などの取引条件を書面やメール等で明示する義務が課され、報酬は原則納品から60日以内、6ヶ月以上続く契約の中途解除は原則30日前までの予告も必要になりました。
業務委託契約書は、この取引条件をまとめて1枚にできる手段です。トラブル防止だけでなく、法律が求める「条件の明示」に応えるためにも、用意しておく意味は大きくなっています。
契約書に最低限入れる6項目
契約書に決まった書式はありませんが、「これがないと後で困る」という項目はだいたい決まっています。まずは下の表の項目が埋まっているかを基準にしてください。テンプレートを選ぶときも、この項目がそろっているかで判断できます。
| 項目 | 何を書くか | 抜けると困ること |
|---|---|---|
| 委託する業務の内容 | 何を、どこまでやるか(成果物・作業範囲) | 「そこまで頼んでない/聞いてない」の水掛け論になる |
| 報酬と支払条件 | 金額・消費税の扱い・支払期日・振込手数料の負担 | 支払いが遅れる・金額でもめる |
| 契約期間・納期 | いつからいつまで/いつまでに納品するか | いつ終わるのかが決まらず引きずる |
| 成果物の権利(著作権など) | 納品物の権利がどちらに移るか | 納品後に「使っていいのか」でもめる |
| 秘密保持 | 仕事で知った情報を外に出さない取り決め | 顧客情報やノウハウが漏れる |
| 中途解約・契約解除 | やめるときの条件・予告期間 | 一方的に打ち切られて損をする |
なお、仕事の完成を約束する契約(請負)か、作業をこなすことを約束する契約(準委任)かで、責任の重さや後述する印紙税の扱いが変わります。この違いは大事なので、契約書を作るときに「自分の仕事はどちらに近いか」を意識しておくとよいです。
無料テンプレートが危ない理由
「業務委託契約書 テンプレート」で検索すると、無料のひな形がたくさん見つかります。骨組みを知るには便利ですが、そのまま署名するのは危険です。理由は次の3つです。
肝心な部分が空欄のまま
業務内容・報酬・納期・権利の欄が「〇〇」のまま残っていることがあります。埋まっていない契約書は、いざというとき自分を守ってくれません。
自分の商売に合わない条項が混ざる
別の業種向けのひな形には、自分の仕事に関係ない条項や、逆に自分に不利な条項が入っていることがあります。
どちらの立場で書かれているか分からない
契約書には「発注者に有利」「受注者に有利」があります。よく読まずに署名すると、気づかないうちに不利な条件をのむことになります。
テンプレートは「骨組み」として使い、中身は自分の取引条件に合わせて作り直すのが前提です。この「作り直し」こそ、Claude Codeが得意とするところです。
Claude Codeで自分用の契約書を作る手順
Claude Codeが「自社のひな形」や「こう直すというルール」をファイルとして覚えておけることは、「Claude Codeでできること」で紹介しました。契約書は、この性質がいちばん活きる書類のひとつです。
最初の1件だけ丁寧に自分の型を作り、2件目以降は案件の条件を渡すだけで下書きを出す。これが手作業に戻らないための肝です。実際の流れは次の4ステップです。

取引条件を箇条書きで書き出す
誰に何を頼むか、金額と支払時期、納期、成果物の権利。表の項目を自分のケースに当てはめるだけで十分です。あいまいな点は、先に相手と話して決めておきます。
Claude Codeに下書きを頼む
書き出した条件を渡し「個人事業主向けの業務委託契約書の下書きを」とお願いします。秘密保持や契約解除など、抜けがちな条項も含めて組み立ててくれます。
自分で読み、専門家に確認してもらう
下書きを最初から最後まで読み、意図と合っているか・不利な条件が紛れていないかを自分の目で確かめます。金額が大きい契約は、この段階で弁護士にも見てもらいます。
電子契約で締結する
紙で郵送してもよいですが、電子契約なら印刷・郵送・押印の手間がなく、後述のとおり収入印紙も不要になります。
私たちはお客様との契約に電子契約(freeeサイン)を使っていますが、他にも同種のサービスは複数あります。freeeサインには公式MCP(AIとサービスをつなぐ仕組み)があり、契約書のPDF化から文書の登録・署名依頼の送付準備まで、AIに任せる構成も作れます。送る前に内容を最終確認するのは人の役目です。
コピペで使えるプロンプト
ステップ2の頼み方は、たとえば次の全文がそのまま使えます。社名・金額・納期はすべて架空の例なので、ステップ1で書き出したご自身の条件に置き換えてください。
プロンプト例(自分の取引条件に書き換えて使ってください)
以下の条件で、個人事業主向けの業務委託契約書の下書きを作ってください。 ・発注者(甲):株式会社◯◯ ・受注者(乙):私(屋号◯◯の個人事業主) ・業務内容:ホームページの制作一式(トップページと下層4ページ。原稿と写真は甲が用意) ・業務に含まれないこと:公開後の更新作業、広告運用 ・報酬:33万円(税込)。着手時に50%、納品時に残り50%を請求 ・支払期日:請求書の発行月の翌月末払い ・納期:契約締結日から2ヶ月後 ・成果物の著作権:検収と支払いの完了をもって甲に移す ・締結方法:電子契約(収入印紙や押印を前提にした文言は入れない) 秘密保持や契約解除など、この種の契約で一般に入れる条項も含めてください。 条件が足りないところは、推測で埋めずに私に質問してください。
大事なのは、業務内容・報酬・納期といった条件を、決めたとおり箇条書きで渡すことです。「業務に含まれないこと」まで渡しておくと、次章の確認リストで直す量がぐっと減ります。
下書きから必ず直している3つ
ここが、テンプレートの記事にはあまり書かれていない、使ってみないと分からないところです。私たちがClaude Codeの下書きをそのまま使わず、毎回チェックして直している3点を紹介します。自分で契約書を作るときの「確認リスト」としても使えます。

電子契約なのに「紙前提の言葉」が残っていないか
署名欄の「印」マークや「甲乙記名押印のうえ」など、紙を前提にした言い回しが残りがちです。私たちは「電子的に署名のうえ」に直し、押印前提の文言と印マークは削除しています。
「言った約束」と契約書がズレていないか
大事なのは条項の多さではなく、「実際に約束したことと契約書が一致していること」です。口頭やLINEで決めた特別な条件は必ず書き、話していないことが紛れ込んでいたら消します。
「やること」だけでなく「やらないこと」が書いてあるか
トラブルの多くは「これもやってくれると思っていた」という期待のズレです。引き受ける業務に加え「含まれないこと」も書いておくと、後からの追加要求に振り回されにくくなります。
収入印紙と電子契約
紙の業務委託契約書には、収入印紙が必要になる場合があります。仕事の完成を約束する「請負」に当たる契約書は課税対象で、契約金額に応じて印紙代がかかります(たとえば契約金額が100万円以下なら200円で、金額が上がるほど段階的に高くなります)。
一方、作業の遂行を約束する「準委任」の契約書は、原則として印紙は不要です。どちらに当たるかは契約書のタイトルではなく、実際の中身で判断されます。
コストを抑える確実な方法が電子契約です。契約書を紙ではなく電子データで締結した場合、国税庁の見解では「文書」に当たらないため、契約金額にかかわらず収入印紙は0円になります。印刷・郵送の手間も省けるので、個人事業主や小さな会社にとっては、電子契約にするだけで手間もお金も減らせます。
まとめ
- 2024年11月のフリーランス新法で、個人への業務委託は取引条件の書面明示が義務に。契約書を用意する意味が大きくなった
- 契約書には業務内容・報酬・納期・成果物の権利・秘密保持・解除の6項目を最低限入れる
- 無料テンプレートは骨組みとして使い、自分の取引条件に合わせて中身を作り直す
- Claude Codeなら自社のひな形と「こう直す」ルールを覚えさせ、案件条件を渡すだけで下書きが出る。最初の1件を作れば次から使い回せる
- 下書きは人がチェック:①紙前提の文言(記名押印・印)を電子契約用に直す、②実際の約束と一致させる、③範囲外を書く。電子契約なら印紙税は0円
よくある質問
Q.業務委託契約書は自分で作ってもいいですか?
作って問題ありません。契約書に決まった書式はなく、当事者が合意した取引条件を書面に残すことが目的です。ただし内容の正確さは自己責任になります。金額が大きい取引や、著作権の帰属・独占の取り決めなど自社に固有の条件が絡む場合は、下書きを作ったうえで弁護士など専門家に確認してもらうのが安全です。Claude Codeは、この「たたき台を早く正確に作る」工程を助ける道具として使うのが向いています。
Q.ネットの無料テンプレートをそのまま使ってはいけませんか?
そのまま使うのは避けたほうが安全です。無料テンプレートは不特定多数向けに作られているため、自分の業務内容・報酬・納期・成果物の権利といった肝心な部分が空欄だったり、自分の商売に合わない条項が残っていたりします。空欄を埋めずに署名すると、いざトラブルになったとき「何を頼んだのか」があいまいで守られません。テンプレートは骨組みとして使い、自分の取引条件に合わせて中身を作り直すことが前提です。
Q.フリーランスに仕事を頼むとき、契約書は義務ですか?
契約書という形式そのものは義務ではありませんが、取引条件の「書面明示」は義務です。2024年11月施行のフリーランス新法により、従業員を雇っていない個人などに業務委託する発注者は、業務の内容・報酬額・支払期日などを書面やメール等で明示する必要があります。契約書はこの明示義務をまとめて満たせる手段です。口約束だけで発注していた方は、この機会に条件を書面化しておくことをおすすめします。
Q.AIで作った契約書は法的に有効ですか?
有効です。契約書の効力は「誰が書いたか」ではなく、当事者が内容に合意して締結したかどうかで決まります。AIが下書きしても、両者が読んで納得し署名(または電子署名)すれば通常の契約書と同じ効力を持ちます。ただしAIは事実と異なる条文をもっともらしく書くことがあるため、内容が自分の意図と合っているかは必ず人が確認してください。重要な契約は専門家のチェックを挟むのが安全です。
要は「自分の取引条件を書き出し、Claude Codeで下書きを作り、内容を確かめて締結する」だけです。
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